設計作品の軌跡 2016-2026

代表作品12選

直近10年(2016-2026)の実績から、代表作品をピックアップし、
構造設計によって、どのような課題解決に挑んだのかご紹介します。


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物件概要

意匠設計
黒川紀章建築都市設計
用途
博物館
種別/規模
RC+S造/地上3階
特徴的な形式
小タマゴ:Hダイヤモンドシェル
延床面積
6,484㎡
所在地
福井県勝山市
竣工年
2023
担当者名
飯田正敏、谷口智紀

対自然と意匠要求に対する構造技術の昇華

2000年に開館した黒川紀章氏設計の博物館の増築棟で、黒川氏の哲学である自然との共生を継承し、3階のうち2階までを山の中に埋設している。埋設部の一部は吹抜けのホール空間であり、土圧に対して地下壁の支持スパンが大きいため厚さを最大1600mmとした。ホール無柱とするため最大スパン20.1mのPC梁としている。
恐竜の卵を模した既存のドームと相似形のドーム(小タマゴ)は、RFL以上はライズ6.32mの鉄骨単層ラチスシェルで構成し、部材にねじり加工を行うことで接合部を統一し溶接や鋼材を低減している。
小タマゴ下部は3mの積雪に対して防水性を高めるためコンクリート系の壁とした。壁は建物外側に倒れ込む形状であるため、プレストレスを導入して内側に引張り戻している。
また小タマゴにより、スラブが非連続となり耐震計画上南北エリアに分かれるため、各エリアに十分な耐震壁を設け、地震力の流れをコントロールしている。
基礎は既成杭であるが、支持層が岩盤であり傾斜も大きいことから、①岩盤への根入れ掘削を行い必要な杭長を決定した後、②本設工事を行うという、2段階工事とした。
以上のように、地盤、土圧、積雪という自然環境による課題、埋設した大空間、吹抜け、ドームといった意匠的な課題を、プレストレス、ラチスシェル、ねじり加工という技術に加え、施工者協力の2段階工事により、自然に佇む建物へと昇華した。(谷口智紀)

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物件概要

意匠設計
INA新建築研究所
用途
共同住宅
種別/規模
RC造/地上37階
特徴的な形式
超高層・免震
延床面積
46,272㎡
所在地
大阪府大阪市
竣工年
2021
担当者名
浅井伸之、田井和博

塔状比4超えの超高層基礎免震構造

本建物は高さ約140m、塔状比4.5の超高層建物である。住居を用途とするため、大地震時発生における建物の損傷防止並びに人命保全、財産保全の観点から基礎免震構造を採用した。
居住性能や、上部架構の剛性確保のため構造種別は鉄筋コンクリート造を採用し、免震装置に過度の引き抜き力が生じないよう、架構形式は純ラーメン架構とし、外周フレームと内周フレームで適宜梁断面サイズの調整を行っている。
免震層の構成は、鉛プラグ挿入型積層ゴム支承、弾性すべり支承、オイルダンパーの組み合わせとし、建設地近傍に存在する上町断層帯による地震にも配慮して長周期化を図った。(田井和博)

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物件概要

意匠設計
芦原太郎建築事務所
用途
スポーツ施設
種別/規模
SRC造/地上2階、地下1階
特徴的な形式
耐震補強
延床面積
7,920㎡
所在地
東京都世田谷区
竣工年
2025
担当者名
飯田正敏、松尾拓真、齋木ちづる、中前美紀、惟理恵

60年の時を超えても使い続けられる大屋根構造

本建物は昭和39年(1964年)に建設されたSRC造の建物であり、平成5年の大規模改修から28年が経過し、特定天井の改修もあり大規模改修をおこなった。
大屋根の支持スパンは対角で100mとなっており、大屋根を形成するSRCの棟梁(キール梁)と軒梁、4枚の異形HPシェルで構成されている。
屋根の防水補修および体育館内のシステム天井もリニューアルする関係から屋根の強度計算も重要になった。当時の計算書(手計算)も現存していたため、当時の力の流れの考え方を参考に立体モデルを復元し、再計算をおこなった。解析モデルを復元することによって、複雑な曲線を表現する屋根の鉄骨梁の考え方、屋根の広がりを抑えるタイビームなど60年以上前の設計とは思えないような高度な技術を用いている事を感じた建物であった。システム天井を吊り下げるキール梁の施工については3DCADも用いてアンカーボルトの納まりなどを注意して計画した。(飯田正敏)

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物件概要

意匠設計
内藤建築事務所
用途
病院
種別/規模
SRC造(一部S,RC造)/地上5階、地下1階
特徴的な形式
免震(免震支承の開発/日本免震構造協会 第26回技術賞 受賞)
延床面積
44,429.32㎡
所在地
愛知県半田市
竣工年
2024
担当者名
小林光男、米本孝志、武部麻子、谷口智紀、中条愛奈

長周期・大振幅地震動に対応した多段すべり支承「TSB」の開発・実装

半田市は知多半島の中央付近に位置し、南海トラフ巨大地震の震源域に近く、過去には1944年に起こった昭和東南海地震により名古屋市を上回る犠牲者を出した。このような歴史的背景から南海トラフ地震に対する半田市の懸念は大きく、新病院の建設において、南海トラフの⾧周期・大振幅地震動に対しても災害拠点病院として医療機能を維持できる耐震性能が求められた。
半田市と名古屋大学で作成された設計用南海トラフ地震動は、レベル2地震動を大きく上回り、建物応答は既往の免震装置の限界を超えるため、新たな免震システムが必要になった。
そこで、球面すべり支承NS-SSB(既大臣認定品)の下に、PTFEを用いたすべり材と表面加工を施したステンレスすべり板で構成する 摺 動 機 構 PSSB を 直 列 に 組 み 合 わ せ た 多 段 す べ り 支 承TSB(Triple frictional Sliding Bearing)を開発し実装した。支承は165cm可動でき国内最大である。
実現が困難と思われたプロジェクトだったが、設計事務所、メーカー、施工会社がチームとなり、レベル2から大振幅地震動に対応できる支承を開発でき、新たな選択肢が生まれた意義は大きいと考える。(米本孝志)

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物件概要

意匠設計
観光企画設計社
用途
ホテル
種別/規模
S造(宿泊棟のみRC造)/地上2階他
特徴的な形式
-
延床面積
8,952.22㎡
所在地
長野県北佐久郡軽井沢町
竣工年
2021
担当者名
山口秋子、山崎和広、谷口智紀、熊倉尚哉

敷地条件に合わせた部材の選定

レストラン棟:敷地内の高低差を利用した建築計画となっているため、擁壁を立て、基礎に片土圧を流し、地上鉄骨部には土圧の影響が生じないようにしている。片土圧を処理する既成杭は、敷地内道路の幅員を考慮した杭打機で打設可能な杭径とした。

宿泊棟:就寝時の静穏性に配慮して、RC壁式構造としている。

温泉棟・MICEエントランス棟:外部に対して開放的なガラススクリーンとするため、鉄骨の細い材で構成している。

各種渡り廊下:敷地内の高低差に応じた、多種多様な渡り廊下である。地盤の必要支持力に応じて松杭を採用している。
(谷口智紀)

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物件概要

意匠設計
芦原太郎建築事務所・隈研吾建築都市設計
用途
工場
種別/規模
S造/地上2階
特徴的な形式
-
延床面積
18,305.55㎡
所在地
福島県福島市
竣工年
2025
担当者名
浅井伸之、荒真一、森本淳、
佐々木亜美、関口悠

山並みと呼応する曲面屋根

構造種別は鉄骨造とし、12.4m×12.0mの基準グリッドを採用することで、工場機能に必要な空間を確保した。
約180m×90mの広大な敷地の支持層レベルを適切に把握する為、設計段階での地盤調査箇所および箇所数への配慮の他、地盤改良工事における施工順序等も施工結果を基に作業所と調整しながら決定した。
山々に囲まれた敷地に対し、従来の工場になかった大らかな曲線と柔らかな質感を有するファサードを実現する為に、曲面屋根が計画された。くの字型の鉄骨フレームを約4m毎に設置し、ブレースにより面内剛性を高めた下地鉄骨を意匠形状に合わせて配置する計画とした。作業所協力の下、3次元の施工図データとすることで、複雑な曲面形状屋根の施工を可能とした。(森本淳)

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物件概要

意匠設計
西松建設株式会社(構造設計協力)
意匠監修:市浦ハウジング&プランニング
用途
寄宿舎
種別/規模
W造/地上5階
特徴的な形式
P&UA構法
延床面積
2,387.68㎡
所在地
神奈川県川崎市
竣工年
2025
担当者名
中澤昭伸、田上誠、濱田すみか、山崎茜

[木造の未来を拓く国内第一号]高耐力・高剛性・高靭性型中・高層木造を実現する「P&UA構法」採用のプロジェクト

開放性が求められる建物桁行は、接合部にGIUA(アンボンド範囲を設ける鋼棒挿入接着)接合を用い、パネルゾーンを鋼材とした「ラーメン架構」を採用している。一方、戸境壁を配置する建物張間は、地震時に木質パネル同士を連結する鋼製コッターが水平変形することでエネルギーを吸収する「シアリング・コッター耐力壁」を採用している(構造設計ルート3・保有水平耐力計算を適用)。壁倍率206倍相当の高性能な耐力壁を実現したことで、各階の耐力壁を4~5箇所に集約しており、将来の変更に対応しやすい構造計画としている。
木質材料はオール国産材である(柱・梁:スギ・ヒノキ集成材、耐力壁:ヒノキCLT)。高度な接合技術により、遮音性・耐火性に優れるものの、その重量から採用が難しかったRCスラブを各階床に採用しながらも、延べ床面積当たりの躯体木材体積は0.13㎥/㎡と極めて少なく、接合部効率の高さが際立っている。(田上誠)

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物件概要

意匠設計
岡田新一設計事務所
用途
小・中学校
種別/規模
W+RC造/地上2階
特徴的な形式
木造ラーメン+RC壁式
延床面積
5,989.81㎡
所在地
茨城県常陸太田市
竣工年
2019
担当者名
中村幸悦、山口健二、柴崎公史、高野友子

木造とRC造の平面混合構造

本建物は茨城県に建設された小・中一貫校であるが、設計当初より木造校舎とすることが求められており、地場産材の活用、木の魅力や特性を生かした建築が課題として挙げられていた。また、必要とされる防火区画については、教室間に挟まれた便所や屋内階段部分をRC造壁式構造とすることで問題を解決し、さらに耐震的には木造とRC造を平面的に一体混合構造とすることで耐震要素をRC造部分に集中させることとした。結果として、木造部分の部材サイズを小さく抑えることができ、さらには、教室の南面やフリールームの北面は開放的な全面窓とすることが可能となった。
木造とRC壁式構造の混合構造はあまり例がなく、接合部の設計や壁式構造の法的な扱いなどにおいていろいろな工夫を凝らすことで無事に解決に至っている。(中村幸悦)

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物件概要

意匠設計
アール・アイ・エー
用途
再開発
種別/規模
E棟:S・CFT造/地上28階
P棟:S造/地上10階
W棟:RC造/地上28階
特徴的な形式
E棟:超高層、制振
P棟:-
W棟:超高層、中間階免震
延床面積
E棟:33,907.54㎡
P棟:14,597.17㎡
W棟:22,297.38㎡
所在地
福井県福井市
竣工年
2024
担当者名
三瓶文彦、宮崎潤、道上和香子、森本淳、前田恵理、磯口真智子

― 福井の新たなランドマークを支える構造デザイン ―

福井駅前再開発では、各棟の用途・性能要求に応じた最適な構造システムを採用した。
E棟は、宿泊機能を有するホテル階の快適性向上を目的として、低層階にオイルダンパーを集中的に配置し、高層部の揺れを低減している。オイルダンパーは、シアリンク型及び筋違型を意匠計画により使い分け配置した。
また、アスペクト比の高いセットバック形状により生じる偏心やねじれ変形に対して、Y方向の制振装置は筋違型のみで基数も少ないが、X方向の制振装置をY方向加力時のねじれ変形抑制として効果的に作用させることで、立体的な応答制御を実現した。
W棟は、居住者の安全性と居住快適性を重視し、地震時の応答を大幅に抑制する免震構造を採用した。
P棟は、求められる性能を確保しながら経済性にも配慮し、アンボンドブレースを適宜配置することで、合理的かつ効率的な耐震性能を実現している。(宮崎潤)

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物件概要

意匠設計
KOO Associates
用途
事務所
種別/規模
S造/地上6階、地下1階
特徴的な形式
免震
延床面積
11,239.25㎡
所在地
大阪府堺市
竣工年
2025
担当者名
浅井伸之、米本孝志、田井和博、武部麻子

シマノ免震建築の集大成

「さらに新しいインテリジェント」をテーマに100年スパンを見据えた建物づくりを目指す思想の基、これまで施主の生産・研究・福利厚生施設の設計に弊社は携わり、新本社ビルはその集大成ともいえる建物である。
建設地と上町断層帯との距離は約1.0kmと近く、BCPと拠点機能維持を目的に、免震周期を十分に長く設定し、地震動の応答スペクトルのピークを外す狙いから、支承は接線周期6.0秒の球面すべり支承を採用した。さらに地震時のエネルギー吸収を考え鋼材ダンパーに加えてオイルダンパーを配置した。
上部架構においては、6階目隠しフレームを利用し鉛直ブレースを設け各階床を支えることで、1 階の四隅柱を抜いて開放感の確保を実現させた。
1・2階の石張り壁は、鉄骨造の水平変形に追従させるため、上階とは縁を切り床からキャンティレバーにて立ち上げたRC壁にリブ壁を設けて水平剛性を高めた。また、水平2,000㎝/s2(2G)の加振実験を行い、石張りが剥離落下しないことも検証した。
屋上には未来の空飛ぶクルマに対応したバーティポートを計画している。(現状は非公共用飛行場として計画) (米本孝志)

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物件概要

意匠設計
光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所
用途
福祉施設・科学センター
種別/規模
S+RC造/地上2階
特徴的な形式
1F:耐震壁付きラーメン構造
2F:ブレース付きラーメン構造+純ラーメン構造
延床面積
8,153㎡
所在地
山口県岩国市
竣工年
2026
担当者名
荒木洋介、平山博美、関優菜

傾斜地複合施設におけるRC基壇とS造建物群の構造計画

本施設は、「福祉センター」「中央共用」「科学センター」の3つの機能で構成され、中央共用部には眺望を重視した大空間を配置するなど、意匠性と機能性を両立した計画となっている。一方で、床や屋根のレベルが複雑に変化し、各ゾーンで構造形式も異なることから、高度な構造計画が求められた。設計当初は建物全体を一体のブレース付きラーメン構造とする計画であったが、左右架構の固有周期の違いによる位相差や、中央共用部の柱を独立して見せる意匠的要請を踏まえ、エキスパンションジョイントにより構造的に分離した。中央共用部は、トラス架構の採用と固有値解析による地震時挙動の検証により、合理的な剛性計画を実現した。また、1階基壇部では、土圧壁の偏在による偏心や複雑な床レベルに起因する短柱化を避けるため、RC耐震壁を効果的に配置し、十分な耐力と水平剛性を確保した。(荒木洋介)

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物件概要

意匠設計
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用途
工場
種別/規模
S造/地上1階
特徴的な形式
制振補強
延床面積
8,500㎡
所在地
茨城県土浦市
竣工年
2016
担当者名
中村幸悦、山崎和広

オイルダンパーを使用した制振補強

工場の耐震補強において求められることは以下の2点である。
1.補強工事中に生産ラインに影響を与えないこと
2.補強工事後に生産性に影響を与えないこと
具体的には、工事中に総足場を組むことや、補強部材を生産に影響する箇所に設置することは認められない。
したがって、本工事では以下のことに留意して補強計画を行った。
1.総足場を必要とする屋根面の水平ブレース補強を避けるために、建物全体としての耐震補強ではなく、各構面毎に耐震性を確保させる補強方法とし、制振部材(オイルダンパー)を各構面ごとに設置することで、強度型ではなく変形制御型の耐震補強工法を採用した。
2.オイルダンパーを主に柱上部と梁の間に方杖形に配置することで、建物下部の生産エリアに影響を与えないように配慮した。
補強工事完了後に実際に震度5強程度の地震を経験したが、建屋が制振効果によりほとんど揺れなかったことが報告されている。(中村幸悦)