実績と挑戦木造設計の歴史と挑戦
木造設計の歴史
織本構造設計は、㈱市浦ハウジング&プランニングとの「RH構法(鉄筋拘束接合による木質ラーメン構法)」の開発に始まり、RH構法の技術を集成材や在来軸組工法に応用した「AKジョイント」の開発支援、㈱工芸社ハヤタとの「BP材(重ね束ね材)」の開発と、BP材を用いた「TKS構法(鉄筋拘束接合構法)」のプラン評定取得等、木造の構造設計だけでなく、様々な木造技術の開発に取り組んできました。
特にRH構法は当時木造では不可能と言われた木質ラーメン構造を実現した画期的な構法でした。
そして、近年では地球温暖化への対策が急務となる中、SDGsの達成や2050年カーボンニュートラルの実現に向け、中高層木造建築への関心が高まっていることから、新たに「P&UA(Panel&Unbonded Anchor)構法※」を開発し、中高層木造建築の普及に努めています。
※㈱市浦ハウジング&プランニングを代表とする「P&UA構法共同技術開発グループ」による共同開発
年表で見る木造設計のあゆみ
1993
広島県府中市立総合体育館(ウッドアリーナ) RH構法(Reinforced Heavy-Timber Structure System)による木造建築として建築基準法旧法第38条(以後、旧38条)の規定による建設大臣の個別認定を取得した、国内初の木造によるHPシェルです。
1994
RH構法におけるジョイントシステム ㈱市浦ハウジング&プランニングと共に「RH構法(鉄筋拘束接合による木質ラーメン構法)」で旧38条に基づく建設大臣の一般認定を取得。これにより、設計者(構造設計を除く)や施工者を限定せず、通常の建築物と同様に本構法を用いた建築物の建築確認を受けることが可能となりました。
また、RH構法を用いた木造建築の設計、監理、施工をサポートし、その普及を推進することを目的として、翌年に㈱RHS技術研究所を設立しました。
2000~
RH構法の技術を応用し、在来軸組工法で使用される一般的な仕口・継手(建築基準法に定められた仕様規定)よりも高強度なAKジョイントの開発を支援しました。金物が露出しないため結露の心配も不要で意匠性も高い接合部です。
2008~
BP材 / TKS構法
㈱工芸社ハヤタとともに、九州の物件を中心にBP材、TKS構法を採用した木造の設計を行いながら、BP材の大臣認定の取得やTKS構法の一般評定取得に向けた試験・技術開発を進めました。その後、2015年にBP材の建築基準法第68条の26第1項の規定に基づく国土交通大臣の認定を取得、2021年にTKS構法によるモデルプランで一般財団法人日本建築センターのプラン評定を取得しました。
2020~
P&UA構法
P&UA構法を用いて作成した10階建て共同住宅のモデルプランにより、一般財団法人日本建築センターのプラン評定を取得しました。
中高層木造建築の普及を目指して
-「P&UA構法」の開発-
株式会社市浦ハウジング&プランニングを代表とする「P&UA構法共同技術開発グループ」の一員として、
GIUAを用いた中高層木造建築の開発に取り組んでまいりました。
2022年10月に一方向ラーメン、一方向耐力壁架構の10階建て共同住宅をモデルプランとした1期開発に始まり、
これまで一般財団法人日本建築センターの構造評定を3回取得して来ました。
ここではP&UA構法(Panel & Unbonded Anchor)の特徴と最新の構造評定を中心にご紹介いたします。
P&UA構法の開発
中高層木造建築物では耐震設計ルート3(保有水平耐力検討)による設計が必要ですが、本構法に限らず対象規模となる木造の構造性能の十分な検証や、構造設計手法の確立がされていません。
加えて構造特性係数 Ds=0.3を実現した構法はなく、木質材料全般の課題として、脆性破壊を防止する靱性の確保、荷重変形関係のスリップ防止、接合部の高い曲げ剛性と耐力の確保などが課題となっていました。
そこで、当技術開発グループでは、これらの課題を解決する新たな構法となるP&UA構法の開発に着手し、中高層木造建築物の実現に向けて日本建築センターの個別評定を取得しました。
GIUAと鉄骨パネル
GIUAは中大規模木造で一般的な鋼棒挿入接着接合であるGIR(Glued-in Rod)に、鋼棒をあえて接着させないアンボンド部分を設けた接合構法です。
このアンボンド部分により、GIRで生じていた脆性的な木材割裂を抑え、大変形時まで木材を損傷させずに鋼棒が伸び縮みすることで
エネルギーを吸収する機構となっています。ラーメン構造に新たに開発した「GIUA」を用いることで、高耐力・高剛性・高靭性を実現します。
工場で柱・梁の木材端部にGIUAを施工しておき、現場ではこの柱・梁を鉄骨パネルにボルトを用いて緊結するだけであり、施工の省力化が図れます。
コッター耐力壁
LVLやCLT等の木質パネルを上下または左右に並べ、鉄骨枠柱とパネル間及びパネル同士の間に設けた切り込みに、
L型に加工した鋼材(コッター)を差し込んで接続した耐力壁で、耐力壁の上下は鉄骨梁とし鉄骨プレートとボルトにより接続します。
地震時には、上下または左右に並べた2枚の耐力壁パネルがスライドおよびロッキングするためコッターが変形し、
地震による力(地震エネルギー)を吸収します。大変形時まで木質パネルを損傷させず、コッターが変形してエネルギー吸収する機構のため、
一般の木質耐力壁に比較して優れた変形性能とエネルギー吸収性能を有しています。
耐力壁に求められる必要なせん断耐力はコッターの数量によってコントロールすることができます。
構造評定を取得した
ハイブリッド架構と通し柱仕口
2期開発では、自由度の高い空間の実現化を目指してラーメン架構を二方向に拡張させ、一部に耐力壁を併用した「11階建て事務所のモデルプラン」で日本建築センターの構造評定を取得しました。
2025年10月に取得したハイブリッド架構と通し柱によるモデルプランは、2期開発のプランをそのままに柱・梁仕口を鉄骨仕口から上層階は通し柱仕口へ変更し、さらにコア周りの一部の柱・梁を鉄骨部材に換えて建て方の効率化と建物重量の軽減化を図りました。
通し柱仕口
梁が取り付く通し柱の周囲に4枚の仕口プレートと4つのコーナー補強用山形鋼によって柱を胴巻きし、高ナット付きのGIRと高力ボルトで固定することで、仕口の回転やガタツキを抑え、梁から柱への応力伝達の効率を高めると共に、木仕口内の応力集中が緩和され、高い仕口耐力が得られます。
通し柱仕口の採用により、一度に複数層の建て方が可能となり、建て方の効率化と建物重量の軽減が図れます。
地震力の程度に応じては、高層建物の上層階に通し柱仕口を用いたり、中低層建物の場合には全層を通し柱方式とすることもできます。
ハイブリッド架構のイメージ図
本構法はパネルゾーンに鉄骨仕口や鋼製ブラケットを用いることを特徴としていることから鉄骨造との親和性が高く、
架構の一部に鉄骨の柱・梁を適材適所で組み合わせることが可能です。
これにより、木造二方向ラーメン架構の中に、意匠上の要求や構造性能、施工性、経済性に応じて、鉄骨部材を採用することができ、
合理的な木造・鉄骨造共存型ハイブリッド架構が実現できます。
実績と今後の展開
本構法については、一方向をラーメン架構、他方向を耐力壁架構とした5階建て寄宿舎の実物件が完成しています。
また、二方向ラーメン架構に通し柱方式とハイブリッド架構を組み込んだ5階建て大学施設が建設中で、
二方向ラーメン架構の一部にハイブリッド架構を組み込んだ6階建て共同住宅の設計が進んでいる他、複数の実物件での採用を計画しています。
今後も適用物件の拡大を図るために、GIUAを応用したアンボンドブレースの開発、免震構造の採用、個別評定の拡張と一般評定の取得を検討中です。