実績と挑戦免震設計と織本
織本構造設計と
免震設計のあゆみ

地震の多い我が国にとって建物の安全性確保は構造設計の使命であり、大地震のたびに構造設計に関する建築基準法等の改定が繰り返されてきました。
人命保全のみならず、病院や庁舎等の重要な施設では大地震後でも事業が継続できるよう免震構造の採用が始まり、今では様々な施設で採用されています。
日本では1980年代より免震設計が始まり、1995年の兵庫県南部地震を機に免震構造への機運が高まり、今では約6,000件の免震建物が建設されています。
初期の免震設計は主に大手施工会社が行っていましたが、弊社では1998年設計のヴィンテージ・ヴィラ横須賀より免震建物の設計を始めました。

設計事務所としては早い時期から免震設計に携わり、240件の設計実績があります。
2009年には超高層免震建物となるシティータワー神戸三宮(当時国内最高高さ)の構造設計に携わりました。
また、既存建物の免震化による改修により建物の長寿化にも貢献しています。近年では大振幅地震動に対応可能な多段すべり支承「TSB」を共同開発し実装した知多半島総合医療センターが「日本免震構造協会賞 技術賞」を受賞しました。
これからも免震設計の先駆者として業界を牽引していきたいと考えています。
年表で見る免震設計の実績
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026 / 8月現在
1995兵庫県南部地震
1996免震設計の始動創立40周年
2000告示免震(建設省告示
第2009号)の施行
2006織本構造設計に
社名変更創立50周年
2011東北地方太平洋沖地震
2016熊本地震創立60周年
2018北海道胆振東部地震
2024能登半島地震
2026熊本地震創立70周年
1996
虎ノ門二丁目ビル(設計補助)
1998
1998
1999
1999
2000
2005
2006
明治屋銀座店
2008
2009
2012
2013
富山県民会館
2015
2020
MJR熊本ザ・タワー
2022
主な出来事
代表作
累計件数 年間件数
実績数(設計完了年)
長周期・大振幅地震動に
対応した免震設計
-多段すべり支承
「TSB」の開発-
背景・経緯
知多半島総合医療センターは、知多半島唯一の三次救急医療と高度急性期医療を支える医療拠点を目指した病院である。
建設地である愛知県半田市は知多半島の中央付近に位置しており、今後発生が懸念される南海トラフ巨大地震の震源域に近い(図1)。
過去には、1944年12月に起こった昭和東南海地震により、現半田病院の敷地周辺にあった『中島飛行機半田製作所山方工場』の
従業員や動員されていた学徒153名が犠牲にあった。
このような歴史的背景から南海トラフ地震に対する半田市の懸念は大きく、南海トラフ沿いの大振幅地震動に対しても
災害拠点病院として医療機能を維持できる耐震性能が求められた。
設計に先立ち、半田市と名古屋大学で作成された想定東海・東南海・南海(以下宝永型)地震動は、
愛知県設計用入力地震動研究協議会(2018年)の断層モデル(図1)を用いて経験的グリーン関数法によって作成されたものであり、
レベル2地震動を大きく上回るものであった(図2)。
免震システムに求める性能
加速度は周期6秒以上で250cm/s2以下、速度は周期を長くしても200cm/s以上、変位は減衰定数h=30%の場合、周期6秒以上で150cm程度と一定となることが分かる。
従って、求められる免震システムの性能は、床加速度から周期6秒以上で、heq=30%かつ許容変形が150cm以上と判断した。
また、入力レベルの異なるベルに応じて性能が変化する支承の開発が課題であった。
多段すべり支承(TSB)の概要
そこでこれらの性能に対応できる免震システムとして、球面すべり支承(以下SSB)の下に、PTFEを用いたすべり材とステンレスすべり板で構成する摺動機構(以下PSSB)を直列に組み合わせた多段すべり支承(以下TSB)を開発した。
SSBは日鉄エンジニアリング社の既大臣認定品である。
接線周期は6.0s、動摩擦係数はsμ=4.3%(中摩擦)と1.3%(低摩擦)を併用し全体でμ=3.0%とした。限界変形はδc=800mmとした。
PSSBはPILLAR社のピラフロン(PTFE)を用いて動摩擦係数はμ3=13.2%とし、限界変形は700mmとした。支承全体の限界変形は取付ボルトを深ザクリ加工として、1,500mm+α可動できるようにした。
免震クリアランスは1,650mmとした。高面圧(60MPa)となるSSB下のPSSBの面圧を許容値内(20MPa)に抑えるためとPSSBの残留変形を回復させる際のジャッキの反力面として、連結板と名付けたPCa部材(Fc60、厚さ200mm)を設けた。
TSB全体の製品管理は伊藤忠丸紅住商テクノスチール社が行った。
TSBの挙動
- 状態Ⅰ
- SSBの限界変形まで、PSSBはすべり板の表面粗さを調整し、スパイク効果と名付けた摩擦(荷重)係数μ0を生じさせることで、下部基礎に固定されている。L2地震動は、この状態Ⅰに留まる。
- 状態Ⅱ
- 地震動が大きくなると、SSBが限界変形に達し、すべり板端部の3mm段差でロックされる。
PSSBのスパイク効果によりSSBの限界変形までPSSBが摺動しないシステムとした。
- 状態Ⅲ
- SSBの水平力がPSSBの摩擦力(μ0×荷重)を超えるとPSSBが摺動する。
TSBの性能検証
(動的加力試験・FEM解析)
右:PSSBの中心軸上の面圧分布
実機と同等性能とした試験体を製作し、振動台による動的加振試験を行った。
L2地震動(告示波)はSSBのみが摺動することを確認した。正弦波や宝永型(検討波50%)は
TSBが想定通り挙動(SSB限界変形→PSSB摺動)することを確認した。
なお、SSBスライダーの脱落や支承のロッキング等の事象は確認できなかった。
FEM解析により、長期、3mm段差衝突直前及びスパイク効果時のPSSBすべり材の平均面圧と、最大面圧を確認した。
解析結果からスパイク効果時の面圧はPSSB端部から少し内側でピークが生じる。
ピークから内側は、段差衝突直前とスパイク効果時の面圧分布はほぼ同じであり、長期よりも面圧が大きくなる領域は、
端部に限定されていることが分かる。